自己診断データから見える中小企業のデジタル活用の現状

1,265社の回答データが伝える課題感

デジタル活用は今日のビジネス環境において中小企業の成長と競争力の鍵を握ります。合同会社デジトレ(以下、当社)の提供する「デジトレ診断」は、中小企業が自社の強みを活かし、効果的なデジタル戦略を策定するための実践的なガイドを提供しています。

2020年12月からデジトレ診断の提供を開始して3年が経過し、これまで合計1,265社の企業がデジトレ診断による自己診断を実施し、総診断件数は1,807件となりました。

中小企業がデジタルツールをどの程度活用しているかを示す重要な指標となる総合スコアの平均は81.3点(200点満点)でした。

これを構成する5つの分野別では、情報を潤滑剤として現場を円滑に回す取り組みである「体幹力」が最も高く21.6点(40点満点)、社内にある情報の整理整頓により情報の使い勝手を良くする取り組みである「基礎体力」が次いで17.1点(同)、そして、自社の魅力を社外へ伝達し、顧客やファン、共に働く仲間を増やしていく組織の力である「伝える力」が15.4点(同)という自己診断結果となりました。

200点満点の半分に満たない81.3点という自己診断結果を見ると、多くの中小企業が、自社のデジタル活用の現状に必ずしも満足していない状況がわかります。

体幹力:事業にデジタル技術を取り入れていく上で軸となる組織の力。意識的に情報を潤滑剤として現場を円滑に回す取り組み。

基礎体力:事業にデジタル技術を取り入れていく上で土台となる組織の力。社内にある情報の整理整頓により、情報の使い勝手を良くする取り組み。

回転力:デジタル技術を取り入れて、より速く、より少ない人数で、より高い品質で事業を回し続ける組織の力。

伝える力:デジタル技術を活用して自社の魅力を社外へ伝達し、顧客やファン、共に働く仲間を増やしていく組織の力。

つながる力:デジタル技術を使って、顧客や協業先とより密接で深い関係を構築していける組織の力。

従業員規模別のスコア

従業員規模別にみると、従業員数100~200名、200名以上の企業、5名以下の個人や小規模企業のスコアは全体平均の81.2よりも高くなっています。一方で6~100名の規模の企業は低いスコアとなっています。従業員規模の大きい企業ではデジタルを比較的上手く活用し始めている一方で、従業員を抱える100名以下の企業では、まだデジタル活用の余地が大きいことがうかがえます。

業種別のデジタル活用の特徴

製造業や情報サービス、士業・コンサル、宿泊などは総合スコアが高く全般的にデジタル活用が進んでいる傾向にあります。一方で、介護・福祉、運輸、飲食などは総合スコアが低く、現状に課題を感じている割合が高いことがわかります。

さらに、5つの力のスコアに業種の特徴が見られます。BtoC業態では「伝える力」のスコアが特に高く、小売店や理美容業、宿泊業などが集客や販促のためにデジタルツールを積極的に活用していることがわかります。リソースが限られる中小企業では自社の特性や課題に応じて目的を絞ってデジタル化を進めていくことが有効です。業種や業態によるデジタルの活かしどころがスコアにあらわれています。

共通する課題は「回転力」と「つながる力」

中小企業に共通する課題としてあげられたのは、より速く、より少ない人数で、より高い品質で事業を回し続ける組織の力である「回転力」13.3点(20点満点)と、顧客や協業先とより密接で深い関係を構築していくための「つながる力」13.9点(同)です。

手書きや手作業に頼った社内業務の生産性を高め、顧客や外注先など外部ともデジタルで連携できる効率の良い業務を実現したいという思いが現れています。

デジトレが提供する、中小企業のデジタル活用をサポートするツール群

当社では、「日本の中小ビジネスのデジタル経営スピードを最速にし、デジタル経営幸福度を最幸にする。」をビジョンに掲げ、デジトレ診断をはじめとする、中小企業のデジタル活用を促進するサポートツール群を提供しています。

中小企業者自身で活用いただくことはもとより、ITコーディネータや中小企業診断士、経営指導員などの中小企業支援者が、個別企業支援や研修会などの場でお使いいただける支援ツールパッケージとなっています。

ぜひ弊社Webサイトもご覧ください。https://dejitore.com/

  • デジトレ診断(100問版)
  • デジトレ診断Quick(50問版)
  • 20の行動計画シート
  • 冊子「デジ活 基本パターン集」
  • 書籍「中小ビジネスを伸ばすデジタル5つの活かし方」
  • ありたい姿整理シート

DXという言葉がかえって中小企業や農業経営体のIT活用・デジタル活用のブレーキとなっているのかも・・・

先日、ある商工会議所の経営指導員さんと意見交換している中で、こんな話題が出ました。

「DXという言葉がかえって中小企業や農業経営体のIT活用・デジタル活用のブレーキとなっているのかも・・・」

確かにその気配はあるのかもしれません。
IT活用といったりデジタル活用といったりDXといったりと、例のごとくこの業界の悪い癖で次から次に言葉が変わる。思い切ってツールを導入してみれば、なかなか活用に至らず、今一つ投資対効果を感じられない。しまいには、単なるデジタル活用はダメで、デジタル変革、トランスフォーメーションでなければならない、なんて論調が国の方からも繰り返し繰り返し投げつけられれば、「もういいや、うちはDXとか関係ないから」と拒否反応を示してしまうのもわからんでもありません。

DXの押しつけに辟易している、そういう感じでしょうか。

そんな中小ビジネスの現場は二極化していると感じています。
デジタル活用の効果をイメージできる経営体とイメージできない経営体。

拙著にも書きましたが、これはシンプルな要因で、経験があるかないかの違いに起因しているとみています。経営者が他の業界でデジタルを使って業務をしてきた経験がある企業はデジタル活用にすんなり進む。あいにくこれまでそういった縁がなかった企業はなかなかデジタル活用の効果をイメージできずに前に進まない。
知っているか知らないかで、経営にデジタルを取り入れるチャンスをつかむ企業とスルーせざるを得ない企業がある。

だからと言って、デジタルツールや技術を学ぼうというアプローチがあり、中小ビジネスでもデジタル人材が必要だなんて言って、プログラミングや統計分析を学ぼうとプログラムが組まれますが、中小ビジネスに本当にそういうデジタル技術を持った人材が必要でしょうか?結論としてはこれまた遠回りです。

これに対する私たちのご提案は、「カイゼン」を入り口にしませんか、ということ。

んん?「カイゼン」、使い古された言葉と思われるかもしれませんが、変化し続ける外部環境に対峙することのみが唯一の生存条件である経営においては、変化に対応して常にカイゼンし続けることは不可欠なマネジメントです。

こういうと、カイゼンでDXは実現できない、とか言い出す輩がいるのかもしれませんが、仮にそうだとして、だから何なのでしょう?カイゼンをしなくていいからDXをしろと言っている?これがイカンのです。
変革・イノベーションなんて、そうそう簡単に実現できるものでもないし、様々なファクターからチャンスを見つけ、出会い、成し遂げていくもの。ではそれまで何をしているか、変革をウンウンと毎日考えればいいのか?そんな無駄なことはありません。徹底して足元を見て、Ongoingの事業をさらに最良のものに、昨日よりも今日、今日よりも明日、と不断のカイゼンを実行していくなかで、もっともっとと執念深く、インテル創業者の本にあるように「偏執狂」かのように、自分のビジネスを徹底的にカイゼンしていく先に、事業の前提条件さえカイゼン対象として見直すことにつながり、結果として「変革していた」、これがトランスフォーメーションではないかと考えます。

あるいは、カイゼンなんてしているよ、と答える事業者もいるかもしれません。はい、カイゼンをしているのはいいことです、というか当たり前です。大切なのは、そのカイゼンをし続けることですね。そして、そのカイゼンサイクルの中に、デジタルという武器を取り入れる、そういうことをしてみませんかと。

中小企業や農業経営者と話をする中で、「デジタル活用の効果がイメージできない」という声を聞きます。
それは無理もありません。前述したとおり、デジタル活用した経験がないのですから、効果をイメージしようとしても難しいのが現実です。では、何もできないではないか、ではなくて、まずはカイゼンしてみましょうよ、そしてそのカイゼンの一部にデジタルを取り入れることを「後から考える」、そうすれば、何のためにデジタルを活用したいかが見えてきますので、それにふさわしいデジタルツールも探しやすくなります。

そう、「デジタル活用」とか「DX」を入り口にするのではなく、事業の「カイゼン」を入り口において、例えば新商品開発や在庫管理の精度アップ、人材の育成をまずは進める、これなら特にデジタルについて詳しくなくても前に進めますね。その上で、そのカイゼン活動の中にデジタルを取り入れられる場所を探す
伝える力、つながる力、回転力、基礎体力、体幹力。
はいそうです、デジタル5つの活かし方をそこで役立てていただきたいのです。カイゼンの延長線上でデジタルを活かす際に、この視点が発想の役に立ちます。ああ、そういうところでデジタルを使えばいいのか、進めているカイゼンの回転をもっと力強く回すためにデジタルの5つの活かし方の、デジトレ診断の100の設問の、少なくともどれか一つが寄与するはずです。

支援者の方々も、「デジタルツールの導入を支援する」ではなく「経営改善を支援する、その中にデジタルを取り入れる」そういう視点で進みませんか。当たり前のことですが、「デジタルツールの導入がゴール」ではなく、「経営改善がゴール」であって、経営改善を実現するための一つのツールとしてデジタル「も」使いましょう、ということですね。「デジタルを活用しよう」はむしろ出口にあたるので、入口(始点)で考えすぎない方が、自然体で、苦しくなく、経営体と向き合いやすくなるのかなと感じております。