2021年版 中小企業白書にデジタル化のヒントあり

先月の23日に、中小企業庁から中小企業白書・小規模企業白書が公表されました。2021年版は新型コロナウィルスによる影響が盛り込まれた内容となっています。

2021年版中小企業白書・小規模企業白書をまとめました
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210423001/20210423001.html

ここ1年の環境の事業環境の変化が業績や資金繰り、雇用へ与えた影響が統計数値とともに丁寧に解説されていて、マクロな変化を理解するのに役立ちます。さらに、経営環境の悪化による危機を乗り越える対策や事業環境の変化を好機と捉えた事例などが盛り込まれているため、自社の課題解決のヒントも探せます。

2021年版の白書には、新型コロナウィルスが経営に与えた影響が随所に見られます。
下図は、企業の設備投資の意向の変化を表現したグラフです。大企業でも中小企業でも「情報化への対応」が2019年から、急激に上がっていることがわかります。設備投資全体としては低迷していますが、情報化投資の優先度が高まっているということでしょう。

さらに、「事業継続力と競争力を高めるデジタル化」という章が設けられ、約130ページに渡って取り上げられています。デジタル化の状況や取り組みにおける課題などが業種や企業規模別に分析した結果が解説されて、自社の取り組みのヒントを得るのに役立ちます。

下図には、デジタル化推進による効果を実感した企業別の課題が書かれています。
「十分/ある程度効果が出た」と回答した企業と「あまり/まったく効果が出なかった」と回答した企業を比べると「アナログな文化・価値観が定着している」「明確な目的・目標が定まっていない」を課題に挙げている割合に差が大きいことがわかります。
デジタル化は手段であり、ITの導入がスタートです。効果を得るためには、デジタル化の目的・ゴール設定を思でで、活用する姿勢や組織文化の醸成などが欠かせないということでしょう。

デジタル化の組織文化醸成の取り組み事例として、仙台市でビジネスホテルを展開する「松嶋産業株式会社」が取り上げられています。
業務効率化のため1996年から予約・顧客情報管理システムを導入したそうですが、思うように進まなかったそうです。2010年時点でもローマ字入力がおぼつかない方もいたのだとか。
そこで、意識改革のため、ローマ字入力やExcelの使い方、システムへの登録方法などの丁寧な教育を実施したそうです。従業員のデジタル化への200の不安要素も1つずつ解消するよう取り組まれたと書かれています。
同社のICT部門を統括する田所常務取締役のコメントとして「意識改革を5、6年以上地道に継続してきた結果、IT ツールを積極的に活用しようという社内全体の意識に変わってきた」という記載があり印象的でした。
デジタル化推進の効果を出し、好循環をつくるための意識改革は、地道で時間のかかる取り組みだということがよくわかる事例でした。

ここで取り上げたもの以外にも、白書にはデジタル化の課題や実際の企業が実際の取り組んで結果を出した事例が満載です。ぜひ、ご一読されることをおすすめします。