人材育成のためのIT・デジタル活用

ここのところ、複数の中小ビジネスからのご相談で、たまたまなのか必然なのか、「人材育成」というテーマが相次いで寄せられています。

採用した若手をどう育成したらいいのか
営業担当者がなかなか伸びないがITで何かできないか

多くの中小ビジネスで人材育成というのは大きな課題となっています。
しかし、IT・デジタルで何ができるのか、というのはなかなかネットを探しても出てこない。
いや、正確には、少し大きい組織の人材育成に資するツールは出てくるけど、例えば一人採用した若手を育てたいとか、社内の3人の若手営業を育てたいといった、少ない人数を対象にしたものがなかなか見当たらない。数十万円のソフトを導入するには少しオーバースペックなんですよね。
もう少しライトに、手軽に、安価なツールでできることはないのだろうか。。

そこで、デジトレメンバーで執筆した書籍「中小ビジネスを伸ばす デジタル-5つの活かし方(7/16以降お買い求めいただける予定です)」に基づいて、人材育成においてデジタルでできること、を整理してみました。

端的には、マニュアル的なものを作成しましょう、ということですが、少し表現を工夫してみました。

<仕事の基本的な手順と方法をまとめた教育教材>
こういうものって通常は「マニュアル」と言ったりしますが、マニュアルっていうと、「はい、それを見てしっかり仕事してね」的なニュアンスも含まれるかなと思いましたので、「教育教材」と書くことで、研修会とかを開催してしっかり伝達する必要性を強調してみました。
大切なことは、教育教材を作ることではなくて、作った教育教材で教育を行う、ということですね。

<仕事に関するFAQ(よくある質問と回答)集>
デジトレでは、現場で社員が戸惑ったり迷ったりするポイントをクリアするために、FAQをまとめることをオススメしています。よく間違うこととか、よく先輩社員が質問されることなどを一覧にしておき、新人さんにそれを共有し、「説明」しましょう。これも、書いてあるから読んでおいてね、ではダメです。やはり、一つひとつについて言葉で説明することで、背景や経緯、狙いも含めて伝わるものだと思います。

<仕事に関する理解度確認テスト>
一度や二度の研修会や説明をすれば、社員がすんなりすべてを理解して腹落ちするかというとそんなことはありません。繰り返しの伝達はやはり不可欠なもの。そんな時に、理解度を測ることができれば、説明する側の説明の仕方のレベルアップができます。理解度が高まらないのは、被教育者の問題ではなく、教育者の問題、教育教材の問題、と考えてカイゼンしていきませんか。

<仕事の現状や変化など、気づきや学びになるデータ>
小売店の店頭で、「この商品、売れてます」的なPOPをご覧になったこともあるでしょう。社員だって、自社の商品やサービスの何が人気で売れているのか、お客様に喜ばれているのか、知りたいし、知っていれば一歩踏み込んだ一言や行動につなげることができるかもしれません。

<成長期待を伝える社長メッセージの作成と説明>
こういうものも、口頭で伝えるだけではなく、書面で思いをしっかりと伝えられるように表現を徹底的に工夫する、それを手渡しする、そして、それを対面で伝達する。伝えるんだという「迫力」が思いを伝えることを後押ししてくれます。

 

実際に活用するデジタルツールの例としては定番の「オフィスソフト」が中心になります。
オフィスソフトがIT活用・デジタル活用かって? はい、まぎれもなくデジタル活用です。とてもベーシックなツールですが、それを徹底的に、効果的にフル活用していくことは、デジタル活用の第一歩だと考えています。
クラウド型のオフィスソフトと言えるのが、GoogleドキュメントやConfluence、JimdoといったWikiツール(書き込みや編集が容易なWebツール)です。これらを利用すると、クラウドシステムですから、社内にいなくても、スマホやタブレット端末で現場や外出時にも確認できるようになります。

また、基幹システムの入力についても、ちょっとしたことですが、選択肢から入力する方式にしておくと教育効果が高まります。
選択肢を見るだけで、「ああ、そういう選択肢があるんだ」「次の案件では他の選択肢になるのかもしれない」「他の選択肢のこと、自分はよく理解していないぞ」といった気づきを生み出し、選択肢そのものが教育的情報となります。

 

こうして整理してみますと、要するには「文書化」してみましょう、という一言に尽きますね。
口頭で伝えている、日頃のOJTで口を酸っぱくして伝えていることでも、一旦文書にしてみる。
文書にすることで、伝える側も伝え方が洗練されていきます。受け取る側も、フローではなくストックとして情報に触れられることで、繰り返し、反芻して理解を深めることがしやすくなります。

せっかく使いやすいオフィスソフトやWikiツールがあるのですから、伝えたいことを写真や動画、図表なども加えて文書化しない手はないですね。

 

参考URL
https://www.nipponmanpower.co.jp/cp/files_pdf/aichi_handbook_hrd.pdf
https://www.jmac.co.jp/data/pdf/rousei_20120713.pdf
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03288.html